TSのつぶやき

身の回りの英語の疑問や考察を綴っています

不思議な日本語訳 – 5 (レトリーバー)

私が犬好きで、大型犬を飼っていることは以前にも述べましたが、大型犬で最も人気がある犬種が「レトリーバー」です。この「レトリーバー」という呼び名は、JKC(ジャパン ケネル クラブ)の登録名で正式な日本名ですが、巷では「レト」の後の長音「リー」を短音にした「レトリバー」も広く使われているようです。

 

「レトリーバー」は、アメリカでは特に人気が高く、2021年のAKC(アメリカン ケネル クラブ)の登録数では「ラブラドール・レトリーバー」が第1位、「ゴールデン・レトリーバー」が堂々の第3位です。これに対してJKC(ジャパン ケネル クラブ)では、「ゴールデン・レトリーバー」が第11位(6,138頭)、「ラブラドール・レトリーバー」が第13位(5,294頭)と冴えませんが、それでも大型犬の中ではそれぞれ一位、二位です。

 

カモ類などの水鳥猟において、仕留めた獲物は、通常、遠方の水面や藪の中に落ちるので、人間がその回収に当たることは非常な困難が伴います。そこで、それらの獲物の回収を行うために作出された猟犬が「レトリーバー」です。(因みに、獲物の探索・追出しを行うのは「ポインター」”Pointer”や「セター」”Setter”) 

よって、「レトリーバー」は水を好み、泳ぎが得意で、特に教えなくても投げたボールを取ってくるなど本能的に回収行為を行います。

 

さて、この「レトリーバー」ですが、「回収する」という意味を持つ英語の動詞 ”Retrieve”(リトリーブ)に、”er”という接尾辞(Suffix)を付けたもので「回収を行う人やモノ」、すなわち「回収犬」と言うことになります。これを素直に発音すれば「リトリーバー」となるのですが、なぜか日本では「レトリーバー」となっています。さらには、これを日本式に省略して「レト飼い」(レトリーバーの飼い主の意)と言う言葉まであり、こうなってくると、もう元の英語が何であったのか分からなくなってしまいます。

 

この原因は、おそらく英単語を「ローマ字読み」する弊害からくるものと思われます。「ローマ字」は英語のアルファベットを使って日本語を表記する際に用いるもので、同時に発音表記としても使われています。英単語のつづりを覚えるときには「ローマ字読み」は有効な手段かもしれませんが、発音の際、安易に「ローマ字読み」を使うと正しい発音ができなくなることがあります。この ”Retriever”も最初の”Re”は「ローマ字読み」にすると「レ」/re/になりますが、実際の発音は「リ」/ri/です。したがって、いわゆる「レトリーバー」は「リトリーバー」と言った方が、より原音に近くなると思われます。

 

 

ここから先は、”Retriever”の日本語訳を離れて、「リトリーバー」の解説になります。

 

「リトリーバー」は基本的に、性格が良く聡明で適応性がある献身的な伴侶です。大型犬に分類されていますが、生まれつき優しく、理解力が高く、柔順で攻撃的でもなければ臆病でもありません。現在、JKCで犬種登録されている「リトリーバー」は下記の6種類です。

  • ラブラドール・リトリーバー ”Labrador Retriever”
  • ゴールデン・リトリーバー ”Golden Retriever”
  • フラットコーテッド・リトリーバー “Flat-coated Retriever”
  • ノバスコシア・ダックトーリング・リトリーバー “Nova Scotia Duck Tolling Retriever”
  • カーリーコーテッド・リトリーバー “Curly-coated Retriever"
  • チェサピークベイ・リトリーバー “Chesapeake Bay Retriever”

 

ラブラドール・リトリーバー (通称: ラブ)

イギリスのケネルクラブに公式に犬種登録されたのは1903年。訓練性が非常に高く、盲導犬等に用いられ、「リトリーバー」の中で最も人気がある。原産国はイギリス。

ラブラドール・リトリーバー ”Labrador Retriever”

 

ゴールデン・リトリーバー (通称: ゴルもしくはゴールデン)

イギリスのケネルクラブに公式に犬種登録されたのは1920年で「リトリーバー」の中では一番新しい。性格が温厚で人懐こく、人間に同調する能力が高いとされ、子どもから老人まで誰にでも扱いやすいことから、「リトリーバー」の中では最も飼いやすいと言われている。原産国はイギリス。

ゴールデン・リトリーバー ”Golden Retriever”
アメリカ系 (被毛は黄色から茶色がっており、目が丸みを帯びて愛嬌のある顔立ち)

ゴールデン・リトリーバー ”Golden Retriever”
– イギリス系 (被毛は白色からクリーム色、目がアーモンド状のためややきつい印象を受ける)

 

フラットコーテッド・リトリーバー (通称: フラット)

イギリスのケネルクラブ設立以前の1860年の展覧会には既に出陳されていた古い歴史を持つ。性格は非常に陽気で活発。成犬になっても子犬のように無邪気で天真爛漫なことから「永遠のピーターパン」と呼ぶ人もいる。被毛は黒もしくは茶で、艶があり美しい。原産国はイギリス。2021年のJKC登録数は第37位(351頭)。

フラットコーテッド・リトリーバー ”Flat-coated Retriever”
– ストップ(鼻骨と頭蓋骨の境目のくぼみ)が浅く可愛い印象

 

ノバスコシア・ダックトーリング・リトリーバー (通称: トーラー)

水鳥をおびき寄せ回収するためにカナダのノバスコシア州で改良された鳥猟犬。リトリーバーの中では最も小型であるが、理解力が高く訓練を入れやすい。性格は温和で明るく、人懐こい。原産国はカナダ。JKCでは毎年10頭前後の登録がある。

ノバスコシア・ダックトーリング・リトリーバー ”Nova Scotia Duck Tolling Retriever”

 

カーリーコーテッド・リトリーバー (通称: カーリー)

イギリスのケネルクラブ設立以前の19世紀中ごろには犬種として確立されており、最古のリトリーバーと言われる。理解力が高く、落ち着いており、自立している。運動能力は高いが、訓練性はあまり高くない。リトリーバーの中では最も大きい。原産国はイギリス。日本ではブリーダーがおらず入手困難。

カーリーコーテッド・リトリーバー ”Curly-coated  Retriever”

 

チェサピークベイ・リトリーバー

アメリ東海岸のチェサピーク湾で19世紀に作出された犬種と言われている(AKCには1878年に初登録)。明るく陽気な性格であるが、穏やかで理解力が高い。勇敢で作業を好む。原産国はアメリカ。日本ではブリーダーがおらず入手困難。

チェサピークベイ・リトリーバー ”Chesapeake Bay Retriever”