TSのつぶやき

身の回りの英語の疑問や考察を綴っています

英語閑話 – 7 (バイク)

私たちが「バイク」”Bike”と言った場合、当然のように原動機(小型エンジン)付きの二輪車「オートバイ」を指すということに異論をさしはさむ余地はありません。この「オートバイ」というのは”Auto-bicycle”(オート・バイシクル)を短縮したものですが、実は和製英語です。英語で”Auto-“とは自動を表す接頭語なので、”Auto-bicycle”は一見、自動式の自転車を表すものとして自然な形のように思われますが、正しくは”Motorcycle”(モーターサイクル)です。

 

では英語でBike(バイク)と言えば何を指すのでしょうか。これはズバリ「自転車」”Bicycle”(バイシクル)のことを指します。「二」「双」「複」の意味を持つ接頭語”Bi-“(バイ)に、一定の現象が同じ順序で戻ってくるという循環・周期が転じた(車)輪の意味である”Cycle”(サイクル)が付いた、”Bicycle”(バイシクル)の短縮形です。

 

よって、たとえば「バイク禁止」とあれば、英語的には「自転車禁止」の意味になり「オートバイ禁止」とはなりません。

「バイク(自転車)乗入禁止」なのに堂々と乗り入れ!?

「バイク進入禁止」の下に、正しい英訳”No Motorcycles”とピクトグラム 

 

この日本語の「バイク」ですが、本来の二輪(自動二輪や自転車を問わず二輪車全般)の枠を超えて、「三輪バイク」や「水上バイク」にまで、その言い方が広まっています。

「三輪バイク」は文字通りの解釈をすれば「三輪の二輪自転車」となり、矛盾した表現を内包した単語となっています。この「三輪バイク」は、正しくは英語で”Trike”(トライク)と言い、「三倍」「三重」の意味を持つ接頭語”Tri-“が付いた”Tricycle”(トライシクル)の短縮形です。

「三輪バイク」 - 前二輪・後一輪タイプ

「三輪バイク」 - 前一輪・後二輪タイプ

水上バイク」は「水上オートバイ」(「ジェットスキー」はカワサキの商標)とも呼ばれ、ウォータージェット推進システムを用い、ハンドルバーの操作と操縦者の身体バランスにより水上を走る乗り物です。したがって、「水上バイク」には(二つの)車輪はないので「バイク」と言う呼称は不適切だと思われますが、恐らくその操縦方法が陸上を疾走する「バイク」に似ていることから「水上バイク」という呼び方になったものと推測されます。この言い得て妙な「水上バイク」ですが、英語では ”(Personal) Watercraft”([パーソナル]ウォータークラフト)あるいは”Water Scooter”(ウォーター・スクーター)と表現されます。

水上バイク」 - 1人乗り(スタンドアップ・タイプ)”Stand-up Type”

水上バイク」 - 2人乗り(ランナバウト・タイプ)”Runabout Type”

 

自転車を指す「バイク」が自動二輪車の「オートバイ」となり、それが「三輪バイク」や「水上バイク」にまで派生して行くことを考えると、日本語の柔軟性というか受容性というか、逞しさを感じざるを得ないと同時に、英語を使う者としては日本語・英語、双方の言語感覚を研ぎ澄まさなければならないと痛感します。