不思議な日本語訳 – 4 (パトリオット)
先日、久しぶりのJ-アラート(全国瞬時警報システム)が発信され驚きました。北朝鮮から発射された弾道ミサイルが、日本の領土・領海に落下または通過する可能性があるとのことでしたが、幸い何の影響もなく無事に過ごすことができ一安心です。
ところで、追尾・解析の結果、実際にこのような弾道ミサイルが日本へ落下すると判断される場合は、破壊措置命令が発令され迎撃が行われることになります。この迎撃に運用されるミサイルシステムが、「パトリオット」”PATRIOT”と呼ばれる、アメリカのレイセオン社” Raytheon Co.”が開発した長距離・高高度・全天候型防空システムです。システムの詳しい説明は省きますが、”PATRIOT”(パトリオット)の名称は、”Phased Array Tracking Radar to Intercept On Target」(目標迎撃用位相配列追跡レーダー)の頭文字を取った造語です。
この”PATRIOT”、一般的には(と言うよりは報道機関では)「パトリオット」表記が広く使われ定着しているようです。
“Patriot”は「愛国者」と言う意味の英語です。「パトリオット」はイギリス式発音で、アメリカ式発音では「ペイトリオット」と”a”の部分が二重母音となります。このシステムの背景を考えれば、アメリカ式発音の「ペイトリオット」を使うべきで、イギリス式発音の「パトリオット」の表記・発音には強い違和感があります。実際、運用にあたる航空自衛隊では、アメリカ式発音を意識してか「ペトリオット」を使用しています。しかし、ここまで意識するのであれば、中途半端な「ペトリオット」ではなく、なぜ、より原音に近い「ペイトリオット」としなかったのか理解に苦しみます。いずれにせよ、「ペトリオット」と聞いて、”Patriot”とはなかなかイメージしにくいと思いますが、どうでしょうか。
私は”University of Pennsylvania”(ペンシルバニア大学)を卒業しているのですが、この”Pennsylvania”を、「ペンシルベニア」と表記する例を近年よく目にするようになりました。これも「ペトリオット」と同様、”a”の二重母音を「べ」と短母音表記するものです。「べ」の方がより原音に近いということなのでしょうが、卒業生としては「ペンシルベニア」より、慣れ親しんだ「ペンシルバニア」の方に愛着があって好ましく感じます。
「より正確に表記したいのなら、べニア板の一種みたいな『ペンシルベニア』ではなく『ペンシルベイニア』にしてくれ。」と言いたくなります。