TSのつぶやき

身の回りの英語の疑問や考察を綴っています

不思議な日本語訳 – 1 (バルチック艦隊)

日本語になった英語を見たとき、「ん!?」と思うことや違和感を持つことはありませんか。それは日本語訳の意味であったり外来語の表記であったりします。今回は日露戦争日本海海戦で有名になった「バルチック艦隊」を取り上げます

 

小学生の頃、初めて社会の授業で日露戦争を習いました。その中で、東郷平八郎率いる連合艦隊がロシアの「バルチック艦隊」を破った日本海海戦(1905年)は、子供心にも胸のすく思いだったのを覚えています。その後、成人になって司馬遼太郎の「坂の上の雲」や吉村昭の「海の史劇」を読んで、日本海海戦を詳しく知るようになると「バルチック艦隊」は、本来、北欧のバルト海に展開する艦隊で、7か月におよぶ苦難の航海の末、アフリカの喜望峰を回り日本海に到着、そこで連合艦隊と会戦し近代海戦史上、例のない完膚なき敗戦を喫したものであることが分かりました。

バルチック艦隊」の旗艦「クニージャ・スヴォーロフ」- 日本海海戦で沈没した

前述のとおりバルチック艦隊バルト海を本拠地としており、英語では”Baltic Fleet”と言います。この”Baltic”はバルト海あるいはその沿岸地方(具体的にはラトビアエストニアリトアニア)を修飾する形容詞です。ということは、”Baltic Fleet”の訳はバルト艦隊(もしくはバルト海艦隊)が正しいことになると思われます。(実際に”Baltic Sea”の日本語訳は「バルト海」で「バルチック海」ではありません。同様に”Baltic States”は「バルト三国」で「バルチック三国」ではありません)

 

ここからは想像ですが、明治時代に”Baltic Fleet”を翻訳する際、”Baltic”を形容詞ではなく固有名詞と勘違いしたために、「バルチック艦隊」なる言葉が生み出され、それが広く使われ定着してしまったものと考えられます。

しかし、こういう誤訳(とまでは言えないかもしれませんが)は、どのように訂正されるものなのでしょうか。文部科学省、(教科書)出版社、それともマスコミでしょうか。

私の違和感が解消されるのは見込み薄ですね。